2012年1月10日火曜日

追憶シリーズ(2) Mike Inelの数奇な人生


これまで、プロジェクトの公にされた部分とそうでない部分については、細心のバランスと統制がとられてきた。私たちはKSの製作については、オープンかつとても誠実だった。しかし、実際に何をしているのか、具体的に説明することはしてこなかった。外部から茶々を入れられないようにすることで、作業に取り組みやすくなったし、正式リリースまでゲームのコンテンツを秘密にしておくことができた。

そういうわけで、超イカすネタでみんなを本当にビックリさせる思いがけないチャンスを得て、これは完全に秘密にしておくことに決めた。でもこのおかげで、ある一人の4LSメンバーをリリースまで完全に世間の注目から隠すはめになった。大変なことだった。それを説明するために、Mike Inelの物語を語ろうと思う。



すべては一通のメールから始まった……

MikeはKSの一ファンとして、オープニングシーンをアニメ化したいと申し出てきた。青天の霹靂だった。ここで皆さんにも理解しておいてほしいことがある。Act1がリリースされたときから、私たちは何十、ひょっとしたら何百という人々から4LSに加入してKSの制作に参加させてもらえないかと問い合わせを受けた。私たちは誰一人として採用をしなかった。お断りさせてもらった理由の中には、声優関連のフィーチャーを取り入れたくなかったというのもあるが、何よりも私たちはすでに必要な人材をすべて揃えていたし、すでにグループとしてどんどん作業を押し進める状態に入っていた。単純に、これ以上チームの隙間に収まるような人を探して、仕事に慣れてもらう必要などなかったのだ。

しかし、Mikeには私たちの誰にもできないことができた。アニメーションだ。しかも非常に優秀だった。さらにアニメーションをゲームに実装するのは、ただ技術的に組み込めばいいだけの容易なことだった。それで私たちは興味をもった。彼に製作に加わってほしいと思った。ところが、私たちはAct1時代のオープニングがとても気に入っていて、それを差し替えたくはなかったので、アニメーションを入れるもっと適した場所はないかと考えはじめた。エンディングとスタッフロールは悪くないが、一番見映えのいいビジュアル要素を入れる場所とは言えない。ストーリーの一部分をアニメ化するというのも良いアイディアには思えなかった。そこで、各ルートの冒頭に、第二のオープニングという感じで5つの短いアニメーションを挿入することになった。Mikeが最初に提案した内容よりも作業量は多くなったが、それでも彼は喜んで取り組んでくれた。そんなわけで、MikeはAct1のリリース後に4LSに応募して採用された唯一のメンバーとなった。

どうしてそうなったのかを思い出せないが、Mikeは他の4LSメンバーとは異なったやり方で作業をしていた。彼はIRCやフォーラム、メッセンジャーの代わりにメールで私と連絡をとり合い、通常4LS内部で行われるフィードバックと手直しの双方向的な繰り返しが私を通じて行われた。いずれにせよ、こういった方法でのやり取りは誰にとってもよい方向に働いた。私はMikeへのフィードバックをまとめることができたので、Mikeの作業効率も上がった。一方で他の4LSメンバーは、自分に関係のあるアニメーションに関する細かい作業を手掛けるだけでよかった。このやり方が、Mikeが他の4LSメンバーと同じやり方で作業するよりも良かったのかどうかは分からない。(恐らくそんなことはない。少なくとも大して良くはならなかっただろう)でもうまくいったので問題はない。

私たちは当初、アニメーションは長くても15秒程度のものを想定していた。ヒロインたちの物語の導入部を説明するのに良い、視覚的にインパクトのある寸劇のようなものだ。Mikeが作り終えた、最初の静音のアニメーションはおよそ51秒はあった。もちろん素晴らしいものだったが、私はMikeがこれほどのものを5つも作りとおせるかどうか、という強烈な恐れを感じていた。もしできなかったら、作った分もすべてオジャンにしなくてはならず、彼のはたらきも無駄になる。ところが、彼が私の期待を裏切ることはなかった。

あっという間に数ヶ月が過ぎ、私たちは毎日のように絵コンテやスケッチ、構想とアイディアをメールでやり取りし、一段階ずつ作業を進めていった。Mikeの熱意は作業を進めるほどに大きくなっていき、アニメーションも当初みんなが思っていたよりもずっと長く、精巧で、はるかに印象的なものになっていった。当時は各Actのタイトルカードができあがっていなかった。絵師のToDoリストの一番下に書かれていたためだ。私たちは見た目を統一するために、Mikeに描いてもらうのが相応しいだろうと考えたのだけど、彼はすでにこちらの予想を超えた仕事に取り掛かっていた。それでもMikeはこの仕事も請け負ってくれた。

かくして、約13ヶ月もの間に、337通のメールが彼と私の間でやり取りされ、そして開発者フォーラムの中でもっとも長いスレッドでの議論を経て、Mikeは5つのストーリーアニメーションを完成させ、オープニングの手直しと各Actのタイトルカードも完成させた。すべて彼の手によってだ。

全体を見て、アニメーションパートの製作はもっとも順調で、邪魔も入らず、そしてプロジェクトの中でもっとも成功した部分だと感じる。独特のコミュニケーションスタイルと、Mikeのプロフェッショナルな精神、および私たちが学びとった教訓から、自分たちの能力を本当に前向きに感じることができた。概していえば、KSプロジェクトに関するさまざまな事柄は、何年にもわたって積み重なった問題のために足を引っ張られていた。しかし私たち全員がすべて真っ白な状態からはじめたアニメーション製作は、終始円滑に、楽しく進展した。

KSでの仕事のうち、私にとってもっとも良かったのは、一緒に仕事をした人々のことだ。私にとって、4LSは本当に桁外れのものだ。親睦を深め、何年も立ち往生し、同じ目標に向かって進み、さまざまなものを見つけ出し、創作者としてお互いを研磨し、そしてともに楽しみあった、素晴らしい人たちだ。私たちはいつも、たとえ誰もKSを読んでくれないとしても、それでも作ることに価値があるんだと言い続けてきた。今でも同じことが言える。

明日は私が半分も覚えていないだろう、長い長い話の第二章になる。

- Aura

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